判例集

  1. 管理費等の滞納(59条競売請求) 
  1. 34か月に亘り117万円余りを滞納している区分所有者に対して、滞納額が長期間かつ多額に及んでいること、またその回収方法として法7条の先取特権や銀行預金の差押えも預金残高不足で効を奏しなかったこと、理事会の法的手段に対して脅迫的な電話をかけるなどの被告の態度等に照らして、今後とも滞納額は増大する一方であるとして法59条の競売を肯定した事例(平成17年05月13日 判タ1218-311 東京地判)
  2. 区分所有者が平成8年4月から平成14年12月までの管理費及び修繕積立金等合計約54万円を滞納し、今後発生する管理費等についても凡そ支払う意志が認められない場合は、同人が今後もマンションに居住し続けると結局は他の区分所有者の負担により補填するか、それが不可能であれば管理の質を落とし修繕積立金を脆弱にする等の措置を取らざるを得ず、同人の存在が区分所有者の共同生活上に著しい障害を及ぼす。よって区分所有法59条に基づき同人が有する区分所有権等について競売を請求することができる。(被告欠席による判決)(平成15年02月05日 千葉地判松戸支部)
  1. 居住者間のトラブル
  1. マンションの居室をフロ-リング床に改装したことによる階下への生活騒音は、受忍度内であり、それによって、不眠症、ストレスによる顔面神経麻痺となり、転居、売却を余儀なくさせられたとし損害賠償請求が、認められなかった事例。(平成6年05月09日 判時1527-116 東京地判)
  2. マンションの下の階の住人が上の階の住人に対して、床をフローリングにしたために生じた騒音につき、全体としては受忍限度内として床を畳敷又は絨毯敷に変更することを求めることはできないとされた事例(平成3年11月12日 判時1421-87/判タ788-231 東京地判)
  3. 絨毯張りだった床をフロ-リング゙床にしたことによって、騒音被害が従前の4倍になったことは受忍限度を超え不法行為を構成するとして階下の区分所有者に対し損害賠償責任を認めた事案・フロ-リング床の撤去、復旧工事の請求については「差止め請求を是認する程の違法性があるということは困難」として認めなかった事例(平成8年07月30日 判時1600-118 東京地八王子支判)
  4. 再三の抗議にも拘わらず、マンション階下の居住者がベランダでの喫煙を継続していることにより、そのタバコの煙が流れ込み、原告が体調を悪化させ、精神的肉体的損害を受けたとして、不法行為に基づく精神的損害に対する慰謝料を5万円とした事例。(平成24年12月13日 判例集未掲載 名古屋地判)
  1. ペットに関するトラブル
  1. バルコニーにおける犬の飼育により悪臭等の被害が発生しているとして、当該犬の飼育が規約上禁止されている「動物を飼育して他の区分所有者に迷惑を及ぼす行為」に該当し、共同利益に反するとして管理組合が区分所有者(会社)及び使用者(同社の従業員)に対し求めた犬飼育禁止確認等の請求が認められた事例(平成2年10月25日 センター通信1993-10 大阪地判)
  2. 規約及び使用細則でペット飼育禁止の定められていたマンションにおいて、これに違反してペットを飼育してた区分所有者にペットクラブを設立させ、その自主管理の下で当該犬猫一代限りで飼育を認める旨を定めた総会決議にも違反して新たに犬を飼育し始めた区分所有者2名に対して、その飼育の禁止とこれが不法行為を構成するものとして弁護士費用各40万円の支払を命じた事例(平成6年03月31日 判時1519-101 東京地判)
  3. マンション内での動物の飼育について、具体的な被害の発生を問わずに一律に禁止する規約が当然には無効であるとは言えないとされた事例・マンション内での犬の飼育禁止を定めた規約に改正される以前から犬を飼育していた区分所有者は、当該規約の改正によって、「特別の影響を及ぼす」場合に該らないとされた事例(平成6年08月04日 判時1509-71(和根崎直樹・判タ882-46) 東京高判)
  1. 専用部分の使用に関するトラブル
  1. 規約において、専有部分を「他の用途に供してはならない」旨定められていた場合に、住戸部分を賃借して会社事務所として使用していた賃借人との賃貸借契約の解除と賃借人に対する明渡し請求が認められた事例(平成5年07月09日 判タ848-201/判時1480-86 東京地判八王子支部)
  2. 住居部分を事務所に使用する場合には、管理組合の承諾を得なければならない旨の新規約を設定し、新規約発効前から事務所として使用していた区分所有者に対し、構造上の問題や居住環境が直ちに悪化するとはいえない場合において、同規約に基づく承諾を拒否する旨理事会で決して通知したことが不法行為を構成するとして、管理組合に損害賠償責任を認めた事例(平成4年03月13日 判時1454-114 東京地判)
  3. マンション専有部分を、年中無休で、朝7時から午後10時頃まで託児所(無認可保育園)として使用している区分所有者に対して、管理組合が使用差止を認めた事例。当該託児所使用は、騒音、エレベータ利用の支障、緊急時避難の支障の畏れなどの被害を及ぼしており、「共同の利益に反する行為」であると認定、また、同マンション内では、他にギター教室や会社の入居が許されているとしても、それらには苦情は寄せられておらず、同請求は権利の濫用に当たらないとした。(平成18年03月30日 判時1949-55 東京地判)